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2022.5.23 - バックトゥザ平成 B-SIDE

バックトゥザ平成 : 福山雅治 “それがすべてさ”

近年、楽曲のサブスク配信が全盛を迎え、アーティスト側の楽曲の「届け方」、視聴者の「聴き方」が変わってきている。また、令和がスタートしてコロナ禍となって以降、アーティスト側の「作り方」、ライブやフェスの開催が控えられている影響で視聴者の『聴く場』も変わってきている。いずれの変化も、より「オフラインからオンラインに」「大衆からOne to Oneに」というBefore→Afterが見てとれる。これに連動して、主役となる「楽曲」そのもののトレンドにも変化が生じてきている。こうした背景と照らし、最近の楽曲とは全く異なるコンセプトで生み出された平成の楽曲の良さと、当時の音楽環境的なバックグラウンドを、令和を生きるNAKAMIの読者にレコメンドしていきたい。

2003年にリリースされたこの曲。確か僕は11歳の小学6年生。ポカリスウェットのCMから流れてきたこの曲。“桜坂”のイメージしかなかった福山雅治が、こんなアップテンポな曲を歌ってたことに衝撃を受けて、一気に好きになったのを覚えています。

実はこの曲を選んだ理由は、僕が初めてCDウォークマンを買ってもらったキッカケの曲だから。時代的にはすでにiPodが発売されていたものの、まだまだ子供には手の届かない存在。しかもインターネットもまだまだ大人のツールとして利用されていたから、僕ら子供が触ることなんてほとんどなかったし、家にPCがない家庭なんてのも普通でした。

だからそもそもiPodの存在もよく知らなかったんですね。知ってました?最初のiPodって白黒で5Gしか容量なかったんですよ?

もっぱら僕らの仲間が持っているウォークマンといえばCD、もしくはMD。とはいえ、小学生ですからほぼウォークマンを持っている人はいなくて、だいたい家にめちゃでかいCDコンポが置いてあるだけでした。むしろ今は家にコンポある人の方が珍しいですよね。

もともと、一回好きになるとずっとその曲ばっかり聞くタイプの僕は、どうしてもこの曲を外でも聴きたかったんです。いろいろ習い事で外に出かけることが多くて、携帯もないから退屈だったのかもしれません。

だから何とかおばあちゃんに頼み込んでCDウォークマンとこのCDを買ってもらったんですよ。タワレコなんて存在も知らなかったから地元のTSUTAYAで。

今は好きな曲を、好きな時に、好きなだけ聞ける時代ですけど、当時の不便の先に聞けた時のドキドキはきっと今の比じゃなかったとも思います。家に帰ってウォークマンの箱を開ける作業、CDをケースから出す時、電源を入れてイヤホンから音楽が流れてきた時…。この時の思い出をまだ鮮明に思い出せるから、未だに僕はこの曲を聴くと、胸がときめきます。

誰でも、ドキドキする曲がきっとあるはず。今でもCDウォークマンを見ると、頭の中には「さあ始めよう」と福山雅治が歌う。今日もドキドキは止まらない。

writer: YUTO

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