僕にとってドラムの「NAKAMI」
数ある楽器の中でも極めてシンプルでアナログな存在であるドラム。
僕は今年で32歳。初めてドラムのイスに座ったのは15歳。人生の半分、ドラムと過ごしてきた。
始めたての頃は、夢中で好きなアーティストの曲に合わせてみたり、図書館で借りた教則本で新しいテクニックを学んだりしていた。
20歳を過ぎた頃、同じリズムでも人によって微妙な違いがあることに気付いた。人の身体は当然1人1人違っていて、身長、体重、手の大きさ、体の動かし方…全く同じ人はいない。
ある日、山下達郎の『It’s A Poppin time』というレコードで村上ポンタさんが鳴らした糸の様に細いシンバルの音を聴いた時、ドラムが歌える楽器であることを知ってぶっ飛んでしまった。あの日から僕にとってドラムの「NAKAMI」は歌心になった。
でも、歌心をそのままドラムの音にすることは果てしなく難しい。知識やテクニックで頭でっかちになるとピュアな音にならない。綺麗な景色を見たり、美味しいものを食べたりして心が豊かになった時は案外良い音が出せたりする。
だから、ドラムの音は人間味に溢れていて、聴けばその人の人柄が分かるような気がする。
自分が出したい音は自分がなりたい人柄に繋がっているのかも。
そんなわけで、自分が還暦になったらどんな歌心を持ってドラムを叩いているだろうと思いながら、今しか出せない音を楽しんでいる。
