「最強のジャパニーズソング」というキャッチを掲げ、今疾風迅雷のごとく勢力的に活動しているバンド、フリージアン。そんなフリージアンのVo.マエダカズシに、彼が以前活動していたバンド「COSMOS」のジャケットにも携わったNAKAMIスタッフ MIYABIがインタビューを敢行。
我々は、お互い初対面がいつ、どこで、どんな会話をしたかも全く覚えていない奇妙な関係値ではあるが、読めばきっと彼らのNAKAMIに触れられるだろう。
取材・編集:MIYABI

photo by : 湊川萌
良い意味で強制的に音楽だけを考えられる。
-お久しぶりです。めちゃくちゃ漠然とした質問ですが、最近どうですか?(笑)
めちゃくちゃ漠然としてるなぁ(笑)
-コロナ禍もあって一人で活動してる期間も長かったですよね。前提として忙しいとは思うんですが、音楽活動的なところとかプライベートのところとかも含めて。
充実はしてると思います。昔と違って、良い意味で強制的に音楽だけを考えられる時間が多くなったし、家ではほっといたら音楽以外のことばっかり考えてるタイプの人間やから(笑)メンバーと居る時は音楽のことしか考えへんし、そういう状況に置かれてるということはすごい良いことかなって思ってます。
-先日リリースされたアルバムのことについてですが、他のインタビューでめちゃくちゃ触れられてると思うんで、私がアルバムを聴いた感想を一方的に喋っていいですか?
全然いいですよ(笑)
-「COSMOS」を組んでた時代から、ライブにも行かせてもらったり、アルバムのジャケットも任せてもらったりしてて、それを踏まえてアルバムを聴いた時「え?!どうしちゃったん!?」って思ったんですよ。このよくわからない感情をどう表現したらいいかずっとモヤモヤしてたんですけど、妙な表現をするならば「めちゃくちゃ好きだった人がめちゃくちゃイケメンになって現れた!」って思ったんです。総じて、(育児中のため)今のフリージアンを生で観れないのがめちゃくちゃ悔しいです。
(笑)
-まだ続きます。で、家事や仕事や育児に追われて、本当に何もしたくないというか、できない日が続いた時があったんです。歌詞を聴くのもしんどい。インストの音楽しか聴きたくない!ただただ音楽を垂れ流してるみたいなしんどい時期があったんですが、ちょうどそんな時にアルバムがリリースされて、一曲目から最後の曲まで聴き通した後、これは疲れてる時(人)こそ聴いて欲しいアルバムだなと思いました。
ほぉ、嬉しいっすね!自分的には(バンドの)テーマとして、決して軽くないというか、カロリー要る音楽をしてるなと思ってて(笑)聴いててしんどいと思ってる人もおるんやろうなと。
結構他のインタビューでも「歌詞に影が見える」って言われて、でも俺はその「影」があった方が良いと思ってて。その「影」が必要無い人は音楽じゃなくて、元気出したいならテーマパークとか行ったらええんちゃうんと思うタイプの人間やから(笑)そういう考えの元で音楽をやってるから、自分らの曲はしんどい人にはしんどいんやろうなと。だからそういう意見は素直に嬉しいっすね。
-私は逆に滾(たぎ)りました。
アッパーな感じにしたかったし、そう言ってもらえて良かったっす。
-個人的に一曲目の“イエスタデイワンスモア”がイントロだけ繰り返し聴いたりするくらい好きすぎるのですが、この曲だけ他の曲より短いことに何か意味はありますか?策略ですか?
メンバー皆で相談してたら、この曲もっと短くていいんじゃね?もう少し詰める?ってなったから策略とかじゃないんすよ(笑)
-じゃあまんまと私は意図せぬ策略にハマったわけですね…(笑)今回のアルバムを聴いて、再度COSMOSの時のアルバムを聴いてみたんですが、やっぱり全然厚みが違うなと思いました。
そうやねんな。そこはコーラスがやっぱりそれ(厚み)を担ってるのかなと。COSMOSの時はコーラスの理論が俺もわかってなかったから、ギターのコードに当たりまくってる音でコーラスして不協和音になっちゃったりしてたから、それならもう要らないなってことでどんどんハモリを削っていて。だから結果的に俺の声だけで歌う曲が多かったなぁ。ハモってたとしても俺の声でハモってたんで(笑)それこそエレカシの宮本さんみたいな感じで。
でもフリージアンになって、りゅーさん(Ba.隆之介)がおるから、りゅーさんに歌って欲しくて(ハモリは)絶対入れないとってなってますね。
-ハモリは誰が考えるんですか?
りゅーさんが考えてくるねんけど、めっちゃ変なコーラスばっか考えてくるんすよ。どこのコードなん?ってのばっかり(笑)普段爆音で演奏してる中で、りゅーさんの声が混ざって聴こえてくるから気持ちいいけど、ソロで聴いたらもう訳がわかんないラインを歌ってて(笑)
-そのうちたなりゅーさん(Ba.隆之介)にハモリだけの仕事来そうですね(笑)各曲のMVも全部拝見したんですが、バラードとかキャッチな曲関係無くどの曲も一人一人が楽しそうで、メンバー各々が以前組んでたライブを観に行ったりしていた身としては、なんかグッと来ました。
今、めっちゃ楽しんでやってますね。年も近いし、仲も良いし。遠征なんて毎回修学旅行の気持ち(笑)四人で一部屋に泊まって、酒飲みながらアホみたいに笑ったりギャーギャー言うて帰ってくる、みたいな。結構他のバンドにも「四人一部屋はキショい」って言われてます(笑)
-(笑)ライブして、打ち上げして、部屋戻ってまたわいわいして寝るみたいな?
そうそう。疲れたやつから「寝るわ!」って寝てたんやけど、最近は「そろそろ寝なやばくない?」って言って寝るようになったっすね(笑)

photo by : 湊川萌
今めっちゃ青春してると思う。
-バンドのキャッチコピーが「最強のジャパニーズソング」となってますが、MVにも歌詞を載せているものが多めなのはメンバーの意向ですか?
その都度皆で話し合いをして決めてますね。この曲は(歌詞)無くてもいいんじゃない?とか、縦書きにするかとか皆でひとつひとつ決めてるかな。
-なるほど。めっちゃ意地悪な質問なんですけど、スポンサーみたいな人に100万円出すから次のアルバムに全部英詞の曲を一曲でいいから入れてって言われたら入れます?
多分俺が全く英語できひんから入れる入れないっていうよりできひんと思います(笑)
-(笑)
あ、でも俺が作った歌詞を英訳してもらって、とかならいいんじゃないすかね?100万くれるんでしょ?一曲くらいやったらええんちゃうかな(笑)
洋楽好きやし、(英詞に)アレルギーがあるわけちゃうから。俺ができないってだけでやってないだけかなぁ。
-バンドのキャッチ変わってきますね(笑)
せやけど、100万はでかい(笑)おいしいもん食べれるし(笑)
-意地悪な質問と言いつつ、フリージアンの英語の曲聴いてみたい自分もいます。
(COSMOSから)フリージアンになった時に、自分が今まで気づかなかった才能とか、わかってたはずやけど見て見ぬふりしてたところを再発見したいなと思ってフリージアンを組んだところがあるから、そういう点で言えば(英詞の曲は)やってみたいなとは。あとは皆がなんて言うかやな(笑)MASASHIが英語できるから任そうかな…あ、でも歌われへんからあかんわ!あかん、無理や(笑)
まあでもフリージアン全員逸脱しない範囲で今までやってないことをやってみようって感じやから、おもしろそうっすね。
-各メンバーがそれぞれ違うメンバーとバンドを組んだりと紆余曲折あって、それ相応に付き合いも長いと思いますが、今に至るまではやっぱり長いようで短いですか?
そうねえ。俺やったら(組んだバンドが)フリージアンで3つ目やし、りょーさん(Dr.たなりょー)やったら学生時代から数えたら6つ目らしいから、音楽履歴書があったら書けますね(笑)
-私も同世代だから感じるのですが、やっぱり本気度はずば抜けて違いますか?
そうっすね。しかもそれが無理してないのが助かってるというか。自然に楽しくやってたらこの感じになってた。今めっちゃ青春してると思います。
-今10歳違う人たちと対バンしたりすることとかあると思うんですが、昔マージービート*などで活動してた時を思い浮かべて、今の音楽シーンどうですか?
*神戸・三宮にあったライブハウス。現在は閉店している。
あんまり変わってないんちゃうかな?どの世代にも影響を受けたバンドがおって、見てたらそれが垣間見えるし、ほんでその中にまた異質なやつがいたりとかして。例えを出すと、銀杏BOYZが好きなバンドやったり、ELLEGARDENが好きなバンドやったり、何に影響を受けたかが大体わかるというか。そこから派生した変なやつがおるというか(笑)それは十年前も今も変わらんかなと。
-フリージアンに憧れてバンド始めました!って人も出てくるかもですよね。
それは面白いっすね!

photo by : 湊川萌
自分がすごいスピードで動かないと同じステージには立てない。
-今対バンしたいアーティストはいますか?
ハルカミライかなぁ。去年、太陽と虎が主催したMUSIC ZOO WORLD 2022でオープニングアクトをやらせてもらった時に観た、ハルカミライのライブめちゃくちゃかっこよくて。立ちボーカルでギター1本やし、フリージアンと同じバンド形態やから親近感湧いてたのもあるんやけど、ハルカミライも俺らのことめっちゃ好きって言ってくれて。企画一緒にやれたらいいなと。あとはハンブレッダーズも付き合い長いし一緒にやりたいな。
あ、それで言うとSUMMERズボップくん*っていう企画をやってた時に、俺は何もできてなくて遠目から見ていいな~入りたいな~って思ってたんですよね。で、当時そのイベントに出てたDENIMSとかTENDOUJIが大きいところに出てるの見て、前の自分とは違ってバンドも精力的に活動してる今だからこそ一緒にやりたいなとは思ってます。
COSMOS始めた時に、自分が頑張らんと友だちと一緒にライブってできないんやなっていうのを実感して。自分が立ち止まってる間に周りはどんどん進んでいくから、自分がすごいスピードで動かないと友だちやのに同じステージにも立てないんやって。それこそ遥か先にいるハルカミライとか、ハンブレッダーズと対バンするには今頑張らないとなって思う。
*関西の3バンド、愛はズボーン、プププランド、THE BOSSSが主宰していたイベント。
-なるほど。最近フリージアンが交流のあるアーティスト含め関西のアーティストがどんどん東京に行き始めてると思うんですが、ぶっちゃけフリージアンも東京進出あったりしますか?
行かなあかんくなったら行くけどって感じっすかね。東京に行きたい!っていう気持ちは実際そんなに無いかも。どうせどこで暮らしても楽しめる自信はあるから。東京に住むメリットというか、東京いいなって思うことってなんやろうって考えたら、行きたい展示会が東京ばっかで開催してるからそれに行けることとか(笑)あ、仲が良い東京のバンドと飲みに行けるのは魅力的かも(笑)フリージアンのメンバーが近くに居て音楽を作ることが全てやからなぁ。特に東京進出は今のところ考えてないです。
-では、アルバム制作中の小ネタというか裏話なんかあれば教えてください。
なんやろう…。あ、実はCDの盤面にふざけた英文が書いてあるからそれは見て欲しいかも(笑)
-This is a pen.くらいの?(笑)
そうそう。日本人が見たら誰でも読めるくらいの(笑)
-それはなんで書こうと思ったんですか?誰かが提案したとか?
あれ誰が言い出したんかなぁ?ここ(盤面)に入れられるんですけどって言われたから「じゃあ英文入れようぜ!」ってなったような(笑)制作2年くらいかけてて、入れる曲も決まってたし、完成までは割とスムーズやったね。あ、あとCDのジャケットは、皆でジャケットになりそうな写真を探したりしてて。俺は自分の家の結構傷だらけのシンクの写真を撮って、ロゴと合うか試したりしたっすね。けど、結局マネージャーがその時レコーディングをしていたSTUDIO UMIの扉をパシャッて撮ったのが一番良いってなってそれに決まりました(笑)
-シンク(笑)結局その写真はボツになったんですか?
そう(笑)けどそのSTUDIO UMIの写真と競ったのよ。ステンレスの無骨な感じいいねって(笑)
-では、最後にメンバーの〇〇にこれだけは言いたい!ってことありますか?
Ba.隆之介へ「気づいてごめん。」
普段りゅーさんが機材車を保管してくれてるんやけど、ある日機材車の後ろがへこんでることに気づいてん。で、俺は結構細かいことに気づいてしまうタイプなのとすぐ思ったことを声にポロッと出してしまうから、その傷を見て「あれ?こんな傷ありましたっけ?」って何気なく言うたんすよ。そしたらりゅーさんが「…ごめん」って(笑)他のメンバーも誰も気づいてなかったみたいで、そのりゅーさんの申し訳無さそうな姿見て「気づいてごめん…」って思った(笑)
Dr.たなりょーへ「一緒に音楽やろうって言ってくれてありがとう。」
まずCOSMOS一緒にやろうって誘ってくれてありがとうって思う。あの誘いがなかったら下手したら俺今音楽やってないかもしれないし。就職して2ヵ月に1回弾き語りするくらいになってたかも。だからありがとうって思う。
Gt.MASASHIへ「ざるそば食べたか食べてないかは覚えておいた方が良いよ。」
彼は、皆で泊まる時に酒と一緒に絶対ざるそば買うんすよ。んで絶対寝る前に食べる。絶対食べてるのに朝起きたら「あれ?俺ざるそば食ったっけ?」って言う(笑)それは覚えておいた方がいいよって話(笑)
-言いそう(笑)ありがとうございます。では、最後にファンの方へ一言お願いします!
見ててください!その一言です!
-今日はありがとうございました!

RELEASE
1st Full Album『FREESIAN』
1.イエスタデイワンスモア
2.傘もない 2mm/h
3.仰げば尊し
4.空想新星
5.宣誓!
6.満願成就の空に
7.悲しみの全てが涙ならば
8.ノンアルコール
9.蛍
10.ウィンターランド
11.傘もない 11mm/h
12.サトラ