アーティストの中身を深堀りするメディア

2023.1.19 - COLUMN B-SIDE

漂泊亭俳太にとっての「音楽」のNAKAMI

NAKAMIの代表のミヤビさんからコラムを掲載しないかというお話を頂いた。

普段ドラムの演奏や環境音楽を作ることをしている私にこんな機会を与えてもらえるなんて本当にありがたい話です。内容は、何らかの分野についてそのNAKAMI=中身、本質について語ってほしいというものでした。

私が自信をもって本質について語れる分野について考えてみました。真っ先に思いつくのはやはり本職の音楽ですが…音楽メディアで音楽の本質について語るというのは、些か私には荷が重いと思ってしまったのが正直なところ。

俺に任せろ!という気概が私にもあれば格好がつく。だが悲しいことにこの壮大なテーマの前で、恥ずかしい話ですが、物怖じしてしまうのが現実です。

しかし、この「音楽の本質」というテーマについて、語れる資格というものがそもそもあるのか?と問われれば、ハッキリと否!と答える勇気は必要でしょう。

私、つまり「漂泊亭俳太」だって、ポール・マッカートニーであろうがブルーノ・マーズであろうが矢沢永吉であろうが、知名度や得ている名声の差はあれど、彼らと同じ音楽家です。音楽家を生業としている以上胸を張ってそれについて語ることに違和感は無いはず。

ここは一丁挑戦してみっぺ!と腹をくくることにしてみました。

まだ音楽という概念を我々人間が持たなかった頃を想像してみてください。まだ文明の庇護が無い我々が外に出ているとき、激しい雨に遭遇してしまったとする。雨が降ってきたらそれを凌げる場所を見つけなければならない。そのまま雨ざらしでいると体温が下がる一方だからです。あたりを見回すと手ごろな岩の洞窟があって、そこの入り凍える手で懸命に火をおこす。暫くするとおこした火によって、身体も心も穏やかな温もりに包まれる。

するとさっきまで自分の身を凍てつかせていた激しい雨の、岩肌に当たるその音が、美しさを帯びた心地よいものに変わっていたのです。なるほど音というものは、ただ耳でキャッチする空気の振動だと思っていたが、受け手のその心情や置かれている状況が変わることで、本来内包しているその美しい響きに気付くことが出来うるものなのだと、初めて認識する。そしてその現象こそが、後に「音楽」と呼ばれるのであった…なんて少々乱暴な想像をしてみました。

我々はこの現代で、後に発明される12音階やスケールなどの理論/技術を用いて音楽を作り、そういったもので音楽市場はほとんど構成されている訳ですが、結局それって、この「洞窟の人」が聴いた美しい雨音の調べをその技術や市場データでもって再構築しているだけなんじゃないかと思ってしまう…というとこれまた乱暴な訳ですが、どれだけ現代的な技術や市場データを用いて音楽を作ったとしても、そこに「洞窟の人」が聴いたような原始的な音の美しさは必ず宿っているというのが、私にとっての音楽の本質であり、宿命でもあるのです。

BIOGRAPHY

1993年、栃木県宇都宮市に生まれる。ドラマー / DJとして東京を中心に活動。stand.fmにてPorco’74sの加藤智之とのラジオ『Weekly Howl』を配信中。

RELEASE

1st Album『あーるすこのいー、しょうみっくもあ』

1.旭
2.あーるすこのいー、しょうみっくもあ
3.Ravi
4.Power

2nd Album『Factory』

1.Factory1
2.Factory2
3.Factory3
4.Factory4

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