先日誕生日を迎え、僕は21歳になった。沢山の方に祝福された喜び、満足感。
所謂“ハタチブランド”を喪失した、寂しさや焦りがぐちゃりと絡み合った感情。
誰かが決めた、1年という単位。20歳の365日目に突如、時間の経過を実感した。
実家の本棚に飾られていた、杉田春音4歳の誕生日を祝うカードには
「おおきくなったら かっこいいおにいさん になりたい」
と書かれていた。当分の間は、生きる目標に困らなさそうだ。
歳を重ねることは確かに複雑なイベント。だが、同時にフレッシュな気持ちにもなれる。
髪形を変えたり、新しい服を買ったり。なんとなく、それまでの自分と何か変化をつけた
くなってしまう。そして今回はなぜか ——大した意味はないのだろう、たまたま、今回は
—— ピアスの穴を開けたくなった。
人生で一度もピアスの穴なんて開けたことがない。未知の領域。
しかし、いろいろな所でピアスの話をしていたら、突然女の子の先輩に「私も開けたいか
らさ、一緒にあけっこしようよ。」と誘われてしまった。そのまま勢いで日程まで決まっ
た。
この、なんとなく思い付きで話していたピアスが突如現実味を帯び始めた瞬間。ピアスに
ついて向き合い、いろいろなことを考えた。
そのうちに、僕は初めてピアスからただならぬ異常性を感じ取った。
僕が感じたピアスの持つ異常性は大きく二つ。
一つ目の異常性は、人々が身体の一部に穴を開けてまで、装飾を行うという点である。つ
まり、体に自ら穴を開けるという行為を、見た目を華やかにしたい・ファッションを楽し
みたいといった願望が動機づけている。身体に自ら穴を開ける行為の動機付けがファッシ
ョンだなんて、異常だ。
二つ目の異常性は、開けた穴が痕として身体に残り続けるという点である。この痕は、一
種の記録ともいえる。身体に穴を開けた痕跡は、その時間・空間を生涯記録し続ける。穴
を開けた瞬間を生涯背負って生きていくなんて、異常だ。過去は時に針のように鋭く、僕
たちを突き刺すというのに。
例えば十年後の今日。鏡を見た僕は、ふと耳に残った痕に目をやる。左耳の、下の方。意
識的に目を逸らすと、体は既に浮いている。意識が少し遠のくのを感じると、まもなくあ
る映像が頭に流れ込む。
狭い部屋、少し興奮した二人。150円の甘ったるい酒と、コンビニのビニール袋。ドン・
キホーテで買ってきたチープなピアッサー。紅い頬。
柔らかい手が耳たぶに触れる。穴を開ける瞬間、あの子はわずかに真剣な顔をした。
穴の位置がズレてしまうのが心配だから?僕の胸は、激しく鼓動した。部屋の温度が上昇
していく。
もうあれは10年前の事か。そこで映像はプツリと途絶える、、、
耳に刻まれた痕跡、そこには例外なく物語がある。
あなたの耳には、一体何が記録されているのか。
そこには誰がいて、どんな話をしていただろう?
どんなにおいや音が、あなたを包んでいたのだろう?
こんな事をいちいち気にする、僕が一番異常みたいだ。

BIOGRAPHY
2021年4月結成 現役大学生 4ピースギターレスバンド。手数の多いフレーズに卓越したプレイ。アートワークや映像もセルフプロデュースする鋭角なセンス。色気のある歌声と上質で洗練された楽曲は圧倒的な個性を放ちファンを魅了する。メンバー全員が現在大学2年生。つい先日成人式を迎えたばかりの彼等は、学校を1年間休学して音楽活動に専念することを決意。2022年2月にはバンド組織を法人化し「新東京合同会社」を設立した。2021年4月に結成し、8月にデビュー作『Cynical City』をリリース。ノンプロモーションながら、Spotifyの「RADER: Early Noise」、「New Music Wednesday」 大型プレイリストにリストイン。続いて、10月にリリースした「The Few」は2作目ながら、J-WAVE「SONAR TRACKS」に大抜擢。その後、『ユートピアン』『36℃』をリリースし、Eggsのデイリーポップアーティストランキングでは1位を記録。2022年1月9日に放送された、テレビ朝日「関ジャム 完全燃SHOW プロが選ぶ年間マイベスト10曲」にて“Cynical City”がピックアップされ、SNSを中心に大きな話題を集める中、2022年1月には『Morning』をリリース。早くも2度目となるJ-WAVE「SONAR TRACKS」に選出された。そして、2月にはカッティングエッジな新境地『濡溶』、3月には『Gerbera』、4月には『Metro』と、クオリティの高い作品を精力的に生み出している。


2022年4月29日(金) リリース
EP『新東京#2』