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2023.3.9 - アーティストリレーコラム B-SIDE

エモとエロ – 続きはらいせ(Dr)/純情マゼラン(Ba) イコマ

さまざまな事象に「エモい」という言葉が使われるようになってしばらく経つ。

語源は勿論「emotional」。これをどっかのせっかちさんが「エモい」と略した。調べてみると今から20年ほど前には既に存在していたらしい。
数年前に新語だか流行語だかに挙げられて以来、若者を中心にスラングとして浸透していったとか。
私が日頃出入りさせて頂いているライブハウスでも、この言葉は頻繁に耳にする。
バンドの激しい演奏、フロントマンが感情を露わにして歌う姿に、フロアから「エモすぎ」「いやーエモかったね」「#エモしか勝たん」なんて感想が聞こえてくる。

一方、「エロい」という言葉。

「erotic」をどっかのスケベが略したんだろう。こちらは今から約50年前、1970年代頃にはあったらしい。鼻の下は伸ばすクセに言葉は縮めるなんて、とってもラブリーである。以下の説明は割愛。

さて。エモとエロ。
画数はともに6画ずつでイーブン。

しかし、思考停止したかのように使われている「エモい」に対して、「エロい」は、比較的まだ言葉に意志があるように思う。
エモいは使い勝手の良い点ではありがたいが、その言葉の中身は希薄である。
エロいと感じる対象は人それぞれ、取り分け色気や性的に感じた際に使われることの多い言葉である。彼には主戦場、ホームとしているハコがある。

しかしその2、これが両者を使い分けるとなると私は少し戸惑う。
熱い汗を首筋に垂らすライブパフォーマンスはエモさもあるがそこにはエロさも含まれているし、ベテラン照明さんの計らいでゆったりとしたライトで演出されるステージは私から見るとエロいが、見る人によってはエモくも見える。

似て非なる言葉と見せかけて、非て似なる言葉。
エモはエロの影法師。
わかりやすく言うと、エモもエロもいっしょ。

中身の(ほとんど)ない言葉をこのような連載企画で取り上げるのもアレだが、ナンでもカンでも「エモい」と表現すること自体に、私自身特に否定的な意見はない。感受性も多様性の時代。それこそがロケンロー。

ただ、私は言葉というものは消耗品だと思っている。次第に傷むし、使う度に鮮度も落ちる。
特に中身の希薄な「エモい」という言葉は簡単に消費され、捨てられるのではないかと心配している。その心配たるや文字を打つ作業さえままmならないgほでふぁ。
その点「エロい」と言う言葉は代えが利かない。デビューしてかれこれ50年は経つが、いまなお第一線で活躍を続ける俗語界のTHE ALFEE 。

この先、エモという言葉がどこまで生き残れるのか。勢いのある若手バンドを応援する気持ちで見届けたい。あわよくばエロ先パイと共に俗語シーンの今後を牽引してくれることを願う。

そしていつかエモとエロの対バンも見てみたい。

エモとエロのインパルス。うねるグルーヴに熱を帯びるフロア。仕事を忘れ卓から離れてハシャぐPAさん。サングラスを下げ、眼に焼き付ける某メジャーレーベルの某エラい人。
そしてステージの2人は思う。二度とないこの瞬間を、全力で鳴らせ(ブルージャイアントおもしろかったね✌︎)。

ちょっと疲れているのかもしれない。
そんなことを考えながらSNSを徘徊していたら、
「エモいを通り越してエロい」という一文を見かけた。

やっぱりエモの先にはエロがいるらしい。なんかエモい。

NEXT BATON>> 淀川パリジェンヌ Vo.クリス

BIOGRAPHY

続きはらいせ
2019年結成、東京を拠点に活動する3ピースバンド。 昨年にはキャリア初の全国流通盤をリリース。全国ツアーを敢行し、ファイナルはソールドアウト。 オルタナティブロックの枠に収まらない多様な要素を盛り込んだ楽曲、圧倒的なライブパフォーマンスで、都内のインディーシーンで確かな評価を得ている。

純情マゼラン
昨年より活動を再開した4ピースバンド。 ギターロック、サイケ、ダンスミュージックやポップスなど様々な要素の旨味を織り交ぜた楽曲に加え、Gt.Vo.稲妻アキ、Key.Vo.モリカホによるツインボーカルが混ざり乱れる。フロアを巻き込むライブは必見。今春から彼らの主催イベント「純情酒彩怪祭」が毎月開催予定。

イコマのひとり配信企画「こどくなみっかい」が毎週配信中。

RELEASE

続きはらいせ
2022.12.21 配信限定Release
Singles「すげぇ/Undertale」

純情マゼラン
2023.02.22 Release
「ネオンサタデーナイト/吐露吐露」
¥1,000 ※会場限定販売

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